2009年02月 の投稿ログ


886.ミトコンドリアDNAを調べると何が判るか?  
名前:バロン鈴木    日付:2月19日(木) 23時4分
 最近、犬のDNAについてのメッセージのやり取りがされておりますが、よく判らない方もいるのではないかと思います。そこで私の知っている範囲で説明してみようかと思います。クレアファミリー伊東さんからも補足していただければ有難いです。
 高校時代に生物の授業で習ったことを思い出してください。
身体を作っている基本である細胞には核という玉のようなものがあります。この核のなかには遺伝子があり、その遺伝子はDNAという成分でできています。遺伝子は親の性質を子に、その子の性質はまた子にと、代々伝えてゆく役目をもっております。しかし、この遺伝子はいつまでも同じではなく、変異したり組み換えたり(いずれもDNAの配列が変わる)して進化してゆきます。つまり環境に適応したり、肌の色が変わったりすることは進化の一つですが、ある病気になりやすくなったり、薬が効きにくくなったりマイナスの進化もあります。ですから核のDNAの配列を調べても人によってかなり違います(この違いをSNP:スニップといいます)。
 細胞のなかにはミトコンドリアという小さな小体があって、脂肪の代謝やエネルギーの生産をしている器官ですが、このなかにも短いDNAが含まれております。このミトコンドリアのDNAは遺伝に関係しておりませんので、変異が起こり難く1万年に一つの頻度の変異しか起きないといわれております。
 ところで、ミトコンドリアのDNAは母系にしか伝わらないというのはどうしてでしょうか。卵子はひとつの細胞ですからミトコンドリアがありますが、精子は核に尾っぽがついたようなちゃんとした細胞ではないのでミトコンドリアは含まれていないのです。
 つまりミトコンドリアDNAは卵子を持っているもの、すなわち女性にしか伝わりません。女性でも途中で死んでしまったり、あるいは男の子しか生まなかった場合は、ミトコンドリアDNAは伝わらず、そこで途切れてしまいます。
 人間のミトコンドリアDNAを調べると、大きく35程度の女系に分かれるそうです。そしてその35の女系はアフリカの一人の女性(ミトコンドリア・イブと呼ばれています)につながるそうです。
 その一人の女性から今の人類が生まれたということではなく、その系列だけが現在まで途切れないでつながっているということです。
 さて、犬のミトコンドリアDNAを調べるとどうなるか?
これはまた次のお話しにしましょう。



887.Re: ミトコンドリアDNAを調べると何が判るか?
名前:didoyama     日付:2月23日(月) 12時33分
大変興味有るお話、とても参考になります。
私の学生時代には、未だその様な研究は下々の我々には伝わっていませんでしたし、此処最近の其の方面の研究の目覚しい発展には、付いていけないくらいでしたが、バロン鈴木様のお話は大変判りやすく、興味を
そそられます。
バセンジーは何となく、水かきのような足の間の幕様のものなどから
想像すると、狼よりもジャッカルに近いような気がしますね。
犬のDNAがとても興味有る研究に思えてきました。
続きを待って居ります。
(東京都)


888.Re: ミトコンドリアDNAを調べると何が判るか? 【その2】
名前:バロン    日付:2月25日(水) 15時46分
 最初の話のなかで一部間違えておりました、すみません。
 精子にはミトコンドリア(mt)が無い、と書きましたが、実は尾の部分にあるのですが、卵子との結合の時に切れて核のみが卵子の中に入るのだそうです。結果、男性のmtDNAは伝わらないということです。

 本題の、犬のmtDNAを調べると何がわかるか?
これはクレアファミリー伊東さんのお嬢さんの研究の目的を聞いてみたいところです。
 判っていることは、犬の母系の先祖をたどることができるということ。ある研究者はmtDNAから犬の先祖を追いかけて4匹の個体にさかのぼる研究を発表しております。また、mtDNAの調査から、犬は東アジアに棲息するオオカミに起源をもつということが、有力な説になっております。
 しかし、犬が人と生活するようになったのは約1万5千年前、中東、ヨーロッパからシベリア、アジアへ、そしてアメリカへと人とともに移動していったと考えると、東アジアからヨーロッパへ伝わるのは逆コースになります。東アジアのオオカミだけに起源を求めるのは少し無理があるように思います。やはり様々なオオカミや近縁の種(ジャッカルなど)から遺伝的な影響を受けたと考えるのが自然でしょう。
 犬とオオカミ、犬とジャッカルはお互いの子を作ることができ、その子もまた生殖可能であることから、遺伝的にはほとんど同じ動物ということができます。ちなみに同じ馬科のウマとロバの混血のラバは生殖能力がなく、遺伝的には犬とジャッカルよりも遠縁になります。
 
 この続きはまた【その3】でお話ししましょう。何か質問がありましたら、わかる範囲でお答えします。


889.Re: ミトコンドリアDNAを調べると何が判るか?
名前:クレアファミリー    日付:2月27日(金) 16時31分
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現在のところは、娘も何の目的とまでは
考えていないのではと思います。
事後 どの様に進めていくかは、決めかねている様です。



890.Re: ミトコンドリアDNAを調べると何が判るか? 【その3】
名前:バロン鈴木    日付:3月4日(水) 17時11分
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 ミトコンドリアDNA(mtDNA)で母系の祖先をたどることができることを判りやすくするために図を書いてみました(図1)。(うまく添付されてるかな?)
 
 図の中心の「私」は両親(父と母)から生まれ、その父と母はさらにそれぞれの父と母から生まれ、・・・・・というように兄弟姉妹を除いて系図を書いてみます。
男性(父)からはは伝わらないので、一番右の2、6、14の番号の母の経路からのみmtDNAが伝わってきております。私が男性であればそこでmtDNAは途切れ、女性であっても子供を生まなかったり、男の子しか生まなかった場合は次の代で途切れることになります。しかし、すべての人は必ず1本のmtDNAの線で古代からつながっていることは理解できるでしょう。
 それぞれのmtDNAの配列を比べることで、お互いがどの母系集団に属しているのかが判ります。世界中の人は約35の母系集団にわかれ、その35のイブもアフリカで化石で発見された一人のミトコンドリア・イブに繋がりるそうです。
 
 話しは変わりますが、アメリカのParkerという研究者が2004年に細胞核の付属DNAについてオオカミと85種(414頭)の犬を比較しております。
 その結果を図2に示します(うまく添付されてるかな?)。
 それによると、オオカミに最も遺伝的に近いのはバセンジーで、次いでアラスカのシベリアン・ハスキーとアラスカン・マラミュート、少し離れてサルーキー、アフガン・ハウンドの中東の犬でした。一方、アジアではチャイニーズ・シャーペイが最もオオカミに近く、次いでシバ、さらに離れてアキタ、チャウチャウでした。
 日本犬は意外にも古い犬種なのですね。それに比べて、オオカミに似ているジャーマン・シェパードも、小さいダックスフントも、ラブラドール・レトリバーも、パピヨンも、残り76犬種はすべて過去200年くらいの間に人の用途に応じて交配、改良された新犬種で、遺伝的にはごく近い仲間です。これまで古代犬といわれてきたファラオハウンド(エジプトの壁画にあるアヌビスに似ている)やイサビンハウンドも実は新犬種だそうです。



891.Re: ミトコンドリアDNAを調べると何が判るか? 【その4】
名前:バロン鈴木    日付:3月13日(金) 14時14分
 さて、本題のバセンジーのミトコンドリアDNA(mtDNA)を調べると何が判るか、についてお話しましょう。
 アメリカのVilaはバセンジーを含む140頭のイヌのmtDNAを調べて4つの母系に分かれ、バセンジーは最も多いグループに属することを発表しています。しかし、調べたバセンジーは1頭だけです。
 これは、例えば、たった1人の日本人のmtDNAを調べて、日本人のルーツは縄文人か弥生人か、あるいは南方から渡ってきた民族か、を調べているようなものです。
 
 その後、スウェーデンのSavolainenは654頭のイヌと38頭のオオカミのmtDNAを調べて、ほとんどのイヌ(96%)はA、B、Cの3つの母系グループに属することを報告しています。このときバセンジーは10頭調べており、最も多いAグループに含まれるが、2つのサブグループに分かれるそうです。すなわち、バセンジーはA(チュウゴクオオカミ系)に属するが、複数の、おそらく地域の異なったオオカミを起源にもつイヌがかけ合わさっているということです。
 10頭調べると1頭のときよりも少し新しいことが判りました。

 またこの研究では、28頭もの柴犬を調べておりますが、ほとんどがA(チュウゴク系)とC(西アジア系)に属するが、なんとB(ヨーロッパ系),D(シベリア系),E(どこにも属さない)が1頭ずつ見つかりました。
 シバイヌは5種もの異なる種類のオオカミを起源にもつイヌがかけ合わさってできているらしいです。E(どこにも属さない)は、もしかしたら絶滅したニホンオオカミかも知れませんね。
 イヌは人とともに移動してきたことを考えると、日本人は多くのルーツの混血民族であることが、イヌのmtDNAの研究からも判ります。
 
 このように、バセンジーのmtDNAを調べて何が判るかは、もう少し頭数を調べてみないと判りません。もし、バセンジーにこれまで知られていないmtDNAの配列が見つかったら、その起源はどこか、地理的に言ってアフリカオオカミ(エチオピアの高原に少数残っているオオカミ)か、はたまたジャッカルか、興味がわくところです。これは狙い実験ではなく、やってみなくては判らないセレンディピティー的実験になりますね。

 これで「ミトコンドリアDNAを調べると何が判るか?」を終わりにしたいと思います。自己流の解釈は間違っているかもしれません。ありがとうございました。
 


892.Re: ミトコンドリアDNAを調べると何が判るか?
名前:ドラ子(大のママ)    日付:3月15日(日) 23時28分
バロン鈴木様、物凄くわかりやすい解説有難う御座いました。
私は、古生物学が好きなので(趣味程度ですが、、、)
動物の系統を調べるのは楽しいですよね。
とても面白いと思いました。
特に、ファラオハウンドが新犬種というのは興味深いです。
アラスカンマラミュート等も外見から、バセンジーよりも
狼に近いと思ってましたが、、、、

外見は狼とは違っていますが(私はやはりジャッカルに近いのでは?
と思っていましたが)バセンジーは野性味が豊かで、
その理由もなるほど、ここにあるんだなという感じです。
また新しい研究等ありましたら、是非、教えて下さい。
(♀/埼玉県)


894.Re: ミトコンドリアDNAを調べると何が判るか?
名前:バロン鈴木    日付:3月18日(水) 12時19分
ドラ子さま、

 興味をもって読んでいただいてありがとうございます。判りやすいとの評価うれしいです。
 ファラオハウンドが新犬種!格好だけでは判らないものですね。イサビンハウンドではなく、イビザンハウンドの間違いでした、これも古代犬と言われていたのですが、、、。
 クレア姉様の研究室で1,000頭ものイヌのmtDNAを調べるそうで、バセンジーもできるだけ多く調べてほしいですね。遺伝的に近い新犬種よりも、古代犬や地理的に孤立しているイヌを調べる方が新しい発見がありそうです。

 話しはヒトになりますが、オックスフォード・アンセスターでヒトのmtDNAを3万円で調べてくれるそうです。私もいずれ調べてもらおうと思っております。
 私の一族は2万5千年前マンモスがばっこしていたイタリア・トスカーナで生まれたジニアを祖先にもち、1万5千年前にはユーフラテス河のほとりで生まれたジャスミンに引き継がれ、その娘サチが1万年かけて極寒のシベリアをこえて日本に到達した系図をもつ、というようなことが判っただけでも何か壮大なロマンを感じませんか? それが判ったからといって日々の生活が何も変わる訳でもありませんが、、。


895.Re: ミトコンドリアDNAを調べると何が判るか?
名前:ドラ子(大のママ)    日付:3月26日(木) 1時13分
すいません、お返事遅れまして、
またまた興味深いお話を頂いていたのに、、、

ヒトのmtDNAって3万円で調べてもらえるんですか!?
結構、手頃なと言ってはおかしいですが、それ位の金額で可能なんですね。
やがては、血液検査の様に当たり前になってゆくのでしょうか?
私も調べてもらいたいです、機会があったら、、、

犬のDNAですが、少し興味が引かれるのは、オーストラリアのディンゴです。
まさに孤立した環境で(ただし最近は、純粋なディンゴは少なくなっているとの事ですが)生きてきた犬ですから。
この犬は、立ち耳であまり吠えない、という特徴があるようです。
バセンジーと少し似ているのでは、と思った事がありますが。
まあ、外見だけで判断はできないと言う事は学習しましたので(笑)
どういう位置づけなのかは解りません、、、

アボリジニと共に大海原を渡って来た犬達を考えると、
ヒトとイヌとの深い繋がりとは、感慨深い物だなと思います。
赤い大地に降り立ち、共に猟をし、時には一緒に眠って、
毛布がわりにヒトの体を暖めていたという、何ともけなげな犬達ですよね。

しかし、後から持ち込まれた羊を襲うから、と乱獲されて数も減ったそうです。まあ、ヒトの身勝手は今に始まった事ではありませんが、、、


896.Re: ミトコンドリアDNAを調べると何が判るか?
名前:バロン    日付:3月27日(金) 10時47分

ドラ子様、お返事ありがとうございます。

 ディンゴはアボリジニーと一緒に渡って来たと考えられていましたが、最も古いディンゴの遺物が3,500年前の年代ですので、その頃、比較的新しく、インドあるいは東南アジアのイヌが船乗りに連れてこられて野性化した、という説が有力です。
 ディンゴのDNAの研究は少なく、Vilaが4頭のディンゴのmtDNAを調べて旧大陸に最も多いグループIに属することぐらいしか判っておりません。したがってオオカミやバセンジーとの近縁関係は不明です。
 
 バセンジーは紀元前3,600年、すなわち今から5,600年前のエジプト初代王朝時代の墳墓に描かれていることから、犬種としてはディンゴより古そうです。この頃のバセンジーは今よりも大型で獰猛だった様子がhttp://bleedingeyeballs.com/basenjiart/artifacts.htmで見ることができます(またはThe Basenji in Ancient Egyptian Artifactsで検索)。
 
ディンゴは吠えない、常に耳が立っている、年1回の繁殖、などバセンジーに似ておりますが、巻尾でないところが大きな違いです。


897.Re: ミトコンドリアDNAを調べると何が判るか?
名前:ドラ子(大のママ)    日付:3月27日(金) 23時47分
有難う御座います!
なるほど、ディンゴは比較的、新しいんですね。
バロン様の博識には頭が下がります。
そうすると、バセンジーはやはり古代犬の代表格って事に
なるんでしょうね。
何故か少しだけ、バセンジーオーナーとして嬉しい気がします。

たかが犬ですが、されど犬って言う感じで、
人間と共に生きて来た歴史は長いので、
多くの研究が待たれる所ですね。

883.お久しぶりです  
名前:imu & tubuU    日付:2月4日(水) 17時7分
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皆様お久しぶりです。
パソコンの調子がずっと悪くメールを送信したつもりが送信
できていないなんて事が起きていて、以前のオフ会にも残念ながら
参加できませんという返事が遅れていないことに気づいたのは
つい最近…大変失礼しました。
イムもめでたく昨年12月で12歳になりだんだん動かなくなってきました
が、食べ物を取る(盗る)時の素早さはつぶU以上です。
つぶUも1歳になり、ますますハイパーです。臆病な性格プラス攻撃
的な性格でよその人が触るということがなかなかできないのですが、
家族の中では可愛いバセンジーです。
いつか皆様と会えたらと思っています。大きくなったつぶUの写真を
添付させていただきます。



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