SteelPantersタクティカルレクチャー
ベストパフォーマンス部隊を編成する
「SteelPanters」(SSI)(以下 SP)はWW2の戦術級陸戦のベストウォーゲームだ。このゲームの醍醐味は自分で編成した部隊とともに長いWW2を戦い抜くキャンペーンにある。編成する部隊は,キャンペーンの間継続して指揮する「コア」部隊と作戦ごとに編成される「サポート」部隊に分けられる。最初のコア部隊編成がキャンペーンの勝敗に大きく影響するのだが,白紙の状態から編成するので陸上作戦の知識がないプレイヤーが最初につまづいてしまうところでもある。今回はSPにおけるベスト編成を国別に考察してみよう。
第1段階:歩兵兵種と練度決定
キャンペーンを開始すると,一番最初に使用する歩兵の種類を決定しなければならない。歩兵は Foot, Motorized, Mechanized の中から選択することになるが,ここで選んだ種類は作戦ごとに編成されるサポート部隊の歩兵にも適用されるのでキャンペーンの流れに大きな影響を及ぼす。Footのメリットは購入ポイントが安いことだ。Motorizedでは歩兵部隊にトラックが付属するがトラックは平地における移動能力が歩兵より1ヘクス大きい程度なのであまりメリットはない。Mechanizedでは装甲兵員輸送車が付属するので,歩兵部隊の移動能力は戦車以上になり,搭載火器が歩兵の攻撃力を倍加してくれる。問題は購入ポイントがFootの倍以上で装甲兵員輸送車に乗車中の歩兵は戦えないということだ。必然的に購入できるユニット数は減り,降車展開中の歩兵は装甲兵員輸送車の防御力をあてにできない。Footを選んでユニット数を揃えるか,Mechanizedを選んで少数精鋭で戦うかは単純に好みの問題なのでどちらがいいとはいえない。ただ,Footが運用形態が単純だけに初心者向けといえるだろう。 最初の画面でもう一つ決めなくてはならないのは部隊の経験値だ。注意してほしいのは,ここで指定する経験値とは,国ごと,時代ごとの相対的なもので,ゲーム中のユニットのレベル表示とは直接は関係ないことだ。例えば'39年の時点ではドイツ軍でGreenを選択しても,ソ連軍でVeteranを選択するよりも高い経験値を持つ可能性が高い。ここでVetranを選ぶと,当然戦闘は有利になるが同時に部隊編成に使えるポイントも減少する。反面,経験の少ない部隊をたくさん揃えても,損害を多く受け,戦闘終了後の再編成で補充だけでポイントを消費してしまい,新しい装備に更新できないこともありえる。キャンペーンでは練度が高ければ有利になるわけでないので注意が必要だ。 この設定が終ると,肝心のコア部隊編成画面に移る。SteelPantersでは24ユニットという制限内で自由に編成を選択できる。極端な話,すべてを戦車で揃えてもいいし,対戦車砲だけの部隊を作ることも可能だ。しかし,キャンペーンではさまざまな状況に遭遇するので,特化したユニットだけで編成すると,サポート部隊で選択できるユニットに制限がでるだろう。また,戦車に限らず大量の購入ポイントが必要なユニットだけでコア部隊を編成すると,大損害を被ったときの修理更新フェーズで損害を回復できず,戦力不足のまま次の戦いに臨んでしまう怖れもある。バランスのとれた編成を考えるのがキャンペーンを戦い抜くポイントだ。 コア部隊の編成ドクトリンは,大まかに分けて二つの考え方がある。一つは第二次大戦当時の中隊編成を基に編成する考えだ。この場合,歩兵1個中隊(1個中隊は3-4小隊で編成)を中核に攻撃力を強化するために工兵分隊や戦車小隊,迫撃砲,対戦車砲を少々追加するのが基本となる。しかし当時の編成を一つ一つ説明していると本が何冊も書けてしまうのでここではシンガポール作戦で使われた日本軍の編成を紹介するのにとどめておこう。もう一つは史実は無視して勝つために必要な部隊で編成する考え方だ。この場合,戦車の割合が多くなり,歩兵もライフル歩兵ではなく工兵を中心に選ぶことになるだろう。もちろんこれらはどちらが正しいということはない。ユーザーがSteelPanthersでなにをしたいのかによるだろう。戦史の追体験やIFを試したいなら史実に則した編成をすべきだし,対人戦などゲームとして勝ち負けを重視するなら後者の考えで編成をすべきだ。
第2段階:国別コアベスト編成
コア部隊編成のヒントと国別の典型的な初期編成と年代経過による更新ユニットの方針について紹介しよう。
大戦初期には戦車の性能もさほど高くなく,後半に登場する強力な戦車も購入ポイントが高いため数多く揃えるわけにはいかない。 そこで,戦闘車両を対戦車用と対歩兵用に分けて考えてみよう。'39年の場合は対歩兵用にPz-Wc,対戦車用にPz-38(t)というのがベストだろう。'40年のフランス戦では対歩兵用にコストパフォーマンスがいいStug-Vbが使える。これは装甲が厚いので接近戦になれば対戦車用にも使用できるだろう。対戦車用はPz-VgからPz-Vj/Stug-Vfと変わり,'42年の終わりに有名なTigerが登場する。購入ポイントが高いことを除けば非常に強力な戦車だ。しかし,半年もすれば,より強力なPantherが登場するので少数にとどめるべきだ。'44年の夏には無敵のKing Tigerが使えるようになる。いずれもポイント数が高いのでPz-Whと併用することになるだろう。対歩兵用では,あまり知られていないGw-38t自走歩兵砲が有効だ。装甲はないも同然だが攻撃力には目を見張るものがある。Brumbarに更新してしまえば市街戦でも威力を発揮するだろう。 ドイツ軍を語るとき避けて通れないのが88mm AAだ。およそ貫けない戦車はなく,長射程で命中率も高い逸品だが,それだけに敵の攻撃対象にされるのは避けられない。戦車に大口径砲を持つソ連やアメリカを相手にすると一撃で撃破されることがあるので配置位置には注意が必要だ。なまじ強力なだけにキャンペーンの途中で鍛え上げた88mmを失うとプレイヤーの士気が崩壊してしまうほどだ。
戦車のコストパフォーマンスはいつの時代でもで常にトップにいるソ連軍だが,大戦初期には異様に低い経験値と士気に苦労する。歩兵の購入ポイントが低いので歩兵は使い捨てと割り切ってサポート部隊で編成し,コアは戦車だけという編成も有効だ。最初はポイント的に軽戦車を中心に編成せざるを得ないが,Lt Tank Companyを選ぶと戦車10両に指揮官が1名となるので,士気の低さとあいまってちょっとした損害で士気が回復せずに部隊が潰走しかねない。装甲車と水陸両用戦車の小隊(ともに3両編成)で部隊を編成するといいだろう。水陸両用戦車は機関銃しか持っていないので,逐次BT-5やBT-7で置き換え,それまでは装甲車を主力にする。またT-34シリーズではT-34/76bを選ぶようにする。これはT-34/76aより強力な火砲以上に無線機装備が重要だ。無線機を装備していると士気を維持しやすいからだ。KV-1cは分厚い装甲に加えてT-34/76に比べて射撃回数が多くなるので,余分に購入ポイントを消費する価値はある。ただし,移動速度がT-34シリーズより遅いのでAssault/Advanceのマップでは運用に注意が必要だ。あとは主力をT-34/85にシフトし,重戦車が必要であればJS-2の登場を待てばいいだろう。
そこそこの経験値と士気を持っているがバランスの悪さから前半は苦しいだろう。イギリス軍の戦車は軽装甲快速の巡航戦車と重装甲鈍足の歩兵戦車に分けられる。どちらもドイツ軍戦車には接近しないと勝負にならない。そこで装甲を重視して歩兵戦車を中心に編成する。また初期のイギリス軍の戦車の多くは榴弾を持たないので歩兵や対戦車砲は機関銃でしか攻撃できない。榴弾を撃てる車両が登場したら少数をコアに入れるようにすべきだ。終盤に入って17pdrをもった戦車や自走砲が登場してくると攻撃力は連合国でも一番になる。
決してバランスが悪いわけではないが,ドイツ軍戦車と正面から戦えるようなユニットはいない。とくに最初は経験値も士気も大して高くないので思ったより苦労する。太平洋戦線で日本軍を相手にする場合は基本的に海兵隊と同じだ。ヨーロッパ戦線では最初からM4シリーズを使えるので戦車で悩むことはないだろう。アメリカ軍のドイツ軍に対する強みは砲兵部隊と航空支援だ(ゲーム中ではアメリカ軍の砲兵支援が他の国に比べて正確)。航空支援や盤外砲兵はサポート部隊にしか編入できないが,盤上砲兵や自走砲はコアに含むことができるのでコア部隊に含めるといいだろう(ポイントが許せば自走砲にすべき)。M4A1とM4A3では実質的な差がないので,戦車ユニットはM4A3E8が登場するまでM4A1のままでかまわない。対戦車部隊はM10から始めて,登場次第M36に更新します。最終的にはM4A3E8またはM36を基幹に,対歩兵用としてSherman 105やM7 Priestなどを少数含む編成がオールラウンドに対応できる。歩兵は'44年以降はSMG Sqdにすると対戦車能力もあるので便利だ。
おそらくキャンペーンとして一番難しいのが日本軍だ。経験値や士気は最高だが,装備は最低で,華々しい戦車戦における勝利などは夢でしかない。また降伏も混乱/潰走(Rout/Retreat)もしないという性質は全滅するまで攻撃され続けるということでもあり,キャンペーンではかえってマイナスの要因となる。ソ連軍と逆に車両のコストパフォーマンスが悪いので歩兵中心の編成するのが基本だ。意外と使えるのが機関銃をたくさん装備した装甲車。初期のマップでは相手の士気が低いこともあり,機関銃で撃ち続けるだけで戦車すら逃げ出すこともある。97式で代表される中戦車も対戦車車両と考えるより,自走歩兵砲として運用するほうがいいだろう。
SteelPanthers タクティカルTips
いかに強力な部隊を編成しても,ただ目標に向かって進むだけでは大損害を被る。逆に弱体な部隊でも戦術次第で強大な相手に勝つこともできる。「柔よく剛を制す」Tipsを紹介しよう
時期:December 1941 (マレー半島 41/12/8)
地域:East Asia
部隊:佐伯挺進隊(第5捜索連隊)
これは史実の第5捜索連隊の半分(軽装甲車と歩兵1個中隊づつ)を表している。この他に支援として第3戦車師団より戦車第1連隊第3中隊(97式中戦車10両,95式軽戦車2両)のほか,第5師団の山砲1個中隊(4門),工兵などが配属されていた。シンゴラに上陸した第5師団は佐伯挺進隊を先鋒にジットラの英軍陣地を抜けてシンガポールを目指した。第5捜索連隊の歩兵中隊は自動車化されており,Motorizedで編成したかったがこの時期の設定ではFoot以外選択できない。