金 忠男・吉原 忍・野田 孝人『メコンデルタ単身赴任記』鳥影社 1999

1999年10月25日
2000年03月5日じゃっかん修正


 著者は、農林省の研究所で稲の栽培・保護、ブタの寄生虫などの研究をしている3人です。メコンデルタの中心都市カントー市とその周辺地域でおこなった研究活動、および、ふだんの生活とを合わせ、読みものふうにまとめたものです。

 文章はうまいとは言えません。内容もパッとしません。著者たちの身のまわりで起きたイロイロなできごとを寄せあつめてゴタゴタと書いています。

 しかしながら、この本の存在は貴重です。農業研究者たちが観察したメコンデルタの農業が書かれています。地方都市で暮らすことで生じる種々雑多なことがらが記されています。今までほとんど類似の本がなかっただけに、その一端がわかるだけでも大変ありがたいことです。

 この本をよむことによって、

のようなことをはじめて知りました。

 カントー省周辺は、稲作に関しては(メコンデルタのなかで)もっとも好条件にめぐまれているところで、極論を言ってしまえば、

の2点にだけ気をつけていればいい、とのこと。2年間に7作している農家さえあるそうです。おどろきました。

 日常のことに話題を転じましょう。
 著者(のひとり)はこういう体験をしたそうです。

 知人が気に入った古い時計を長時間かけて交渉し、やっと五十ドルまで値切って手に入れた。何と、言い値の半額である。私はそのような物に興味は無かったが、店員がお前も買えとしつこく迫ってくるので、知人の反応を見るのも面白いと思い、試しに「二十五ドル」と言ってみた。ところが、何としたことか即座に「二十五ドル、OK」で手打ちとなってしまった。当然のことながら、おさまらないのは知人である。必死の形相で店員に抗議するが、この種の抗議には手慣れたものであった。曰く、「あなたはお金持ちで五十ドルでも買えそうに見えたけど、この人はあなたより貧乏でお金がなさそうだから」(p139)
 おもわず笑ってしまいました。
 金もちと貧乏人(に見える人)は値段がちがうのですよね。そういうことを客の目のまえで公言してはばからないのも、かのじょら(かれら)らしいことです。ベトナムの小商売人たちの感覚をよくあらわしている話だとおもい、感心しました。

 ほかには、

というところを興味ぶかくよみました。

 ところで、単身赴任生活をされていながら、女のカゲもカタチも現われないのは、どうしたわけなのでしょうか、著者の方(々)?日本でいう連れ込み宿のようなところに滞在していて、しかも、そのノクスンホテルとやらをずいぶんとなつかしがっているではないですか。楽しい思いは1度もされなかったのでしょうか。

 書かれなかったことがいろいろとあるのではないですか?どうしても邪推してしまうのです。


 著者たちがかかわった研究が農水省のWWWにのっていました。リンクしておきます。


moto@ua.airnet.ne.jp


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