10.おわりに
コーヒーは奥が深いとはよく言われますが、長い間こうだと思っていたことが必ずしもそうでなかったり、それまで見えなかった新しいものが見えてくるといったことを何度も経験しておりますので、あえて過程としての報告とさせていただきました。私自身コーヒーを生業としておらず、限られた範囲での研究ですので間違いもあるかもしれません。どうかそのあたりをご了解のうえ、参考になるところはご利用ください。この原稿をまとめたところで最近ある方から世界には抽出方法のひとつとして「濃縮抽出」というものがあるということを教わって驚きました。少量の水か湯でコーヒー粉を抽出して濃縮液を作り、熱湯でうすめて飲むのを濃縮抽出といって、南米などで主流の抽出法であると紹介しているサイトがあります。Six Coffee Brewing Techniquesで検索すればつぎの6通りの方法が出てきます。
「トルコ風」、「ギリシャ風」など中東式の抽出法
濃縮抽出
パーコレータ式
サイフォン式
ドリップ式
プレス式
これを見るかぎりでは、濃縮抽出したコーヒーをうすめて飲むことは全くおかしなことではないと大変勇気づけられました。別のサイトには、南米エクアドルの庶民的な食堂でコーヒーを注文すると、醤油さしのようなものが出てきて、中には茶褐色の濃縮コーヒーが入っていることが紹介されています。作り方は煮出す方法のようでサイクロン式とは異なりますが、味がまろやかあるいはクセのないクリアな味とされているところには共通点がありそうです。
コーヒー粉によっては濃く淹れてうすめて飲むことによってまろやかですっきりした味が楽しめること、濃縮コーヒーがエスプレッソに似た様々な楽しみ方ができること、モバイルコーヒーとしていつでもどこでもコーヒーを楽しめること、などが濃縮コーヒーのよいところです。サイフォンもサイクロン式抽出に使えば濃縮コーヒーへの用途が広がることになります。これらのことがもっと多くの人々に知られ、一般に普及することにより日本のコーヒー文化の発展に寄与できれば幸いと思っております。
文末になりましたが、松屋式ドリップの詳しい情報を発信されているフレーバーコーヒーの中川様、サイフォンその他コーヒーに関する有益な助言をいただいた愛知県春日井市の池ヶ谷様、濃縮コーヒー理論をつくるきっかけを与えてくださった金沢大学の広瀬名誉教授をはじめ、ご協力くださった多くの方々に感謝いたします。