3.対象のコーヒー豆
私はコーヒー液からコーヒー豆を評価することに関して次のような提唱をしています(文献〔11〕)。「ブレのない抽出をすれば、コーヒー液がブラックで飲めるかどうかによる評価をそのままコーヒー豆に対して適用することができる。」
ここで言う「ブレのない抽出」とは、ドリップ式による場合は訓練されたプロによる正しい抽出を意味してはいますが、プロでなくてもドリップ式抽出をしたコーヒー液がブラックで飲めれば、よいコーヒー豆であるとみてよいと言えます。問題はブラックで飲めないコーヒー液になる場合です。一般消費者がドリップ式でプロのようなブレのない抽出をすることは難しいものですので抽出したコーヒー液がブラックで飲めないからといってコーヒー豆がわるいと評価することのは考えものです。抽出の仕方によってはブラックで飲めるかもしれないからです。ブラックで飲めないコーヒー液にはまろやか成分のほかにしぶみ成分も混じっているということになります。ここに、サイクロン式で抽出する意義がでてきます。後に詳しく述べますが、サイクロン式抽出はまろやか成分だけを抽出するのに適している反面まろやか成分以外がカットされるということでもあります。まろやか成分だけを抽出したコーヒーは飲みやすく多くの人が美味しいと感じても、一方ではもっとこくがなくては美味しいと評価しない人もいます。料理にしましても、うまみの多い材料に香辛料などが適度に混じっているとうまみが引き立ち奥深い味になるように、コーヒーもまろやか成分とそれ以外の成分が適度に混じっている方が味わい深い美味しいコーヒーになるのだろうと想像されます。このように考えますと、ドリップ式でいつもおいしくいれることのできる豆は、サイクロン式には適していないかもしれません。サイクロン式抽出に適した対象の豆は、「ドリップ式で抽出してブラックで飲めないコーヒー豆」と言えるのではないかと思っています。
田口護氏が文献[1]で定義されているよいコーヒーの条件をみたすコーヒー粉をよいコーヒー粉といたしますと、その条件を完全にはずしているものはわるいコーヒー粉といえます。どちらともいえないコーヒー粉もありますのでこれを便宜的に中間のコーヒー粉とします。ドリップは淹れ方にブレがでやすいとされていますが、よいコーヒー粉は淹れ方によらずブラックで飲めるはずです。わるいコーヒーは淹れ方によらずブラックでは飲めませんが、中間のコーヒー粉は淹れ方によってブラックで飲めたり、そうでなかったりします。サイクロン式は、このような中間のコーヒー粉や悪いコーヒー粉に適用するのがよいのではないかと考えています。図1に点線の○で示したあたりになります。
図1
サイクロン式抽出に適した対象のコーヒー粉