5.濃縮コーヒーを作る
サイクロン抽出をいろいろな条件で試していますと、コーヒー粉が多いときなどに吸引の失敗からやむをえず自然滴下にまかせ長時間かかってしまうことがありました。当初はこんなに時間がかかったのではしぶみ成分もかなり出てしまったのではないかと心配でしたが、案外そうでもありません。そのようなことから濃い状態であればしぶみ成分は溶け出さないということに確信を深めました。まろやか/しぶみ仮説が成立するものとすれば、逆にこれを利用してみようと思ったのが濃縮コーヒーを作ることになったきっかけでした。まろやか成分は濃い水溶液にも溶けるとすれば、もっと少ない湯でも抽出できるのではないかと思ったわけです。実際にためしてみますと2人前程度のコーヒー粉では2倍以上濃くすることは難しいのですが4人前、6人前とコーヒー粉の量を増やしますとうまくいきそうなことが分かってきました。つまり3倍の濃さや4倍の濃さのコーヒー液ができるのです。コーヒー粉の量を増やせば濃いコーヒーができることは当然ですが、もとの人数分の量までうすめてそれがコーヒーとして許容できるものになっていないと意味がありません。逆の言い方をすれば、ちょうど良い濃さまでうすめたとき、少なくとも元のコーヒー粉人数分に見合う量になっている必要があります。たとえば4人前のコーヒー粉をつかって濃縮コーヒーが100ccできたとします。これを3倍にうすめたときちょうど普通に飲める濃さになったとすれば300ccのコーヒーがとれたことになります。しかしもとが4人前のコーヒー粉ですから、1杯分のコーヒーが130ccとすれば量的に2人前強にしかならず不十分です。3倍の濃縮コーヒーであれば3倍にうすめたとき少なくとも4杯分の量である520ccになるだけの量、174cc(520ccの1/3)の抽出は出来ていなければいけません。幸いサイクロン式は再現性の高い方法ですので、時間と量を計ってやれば何回でも同じ濃さの抽出が可能です。試行錯誤を重ねるうちにおぼろげながら明確にすべきことがわかってきました。それはコーヒー粉と湯の量的関係をモデル化しそれらの関係を数式で表すことです。これができれば、何人前のコーヒー粉から何倍濃度の濃縮コーヒーをつくることが出来て、それにはどれだけの量の注湯をすればよいかがわかります。