7.許容濃縮の探索

濃縮コーヒー抽出モデルでは、濃さ倍数mの濃縮コーヒーが抽出できることを前提に議論を展開してきました。しかし先にも述べましたように少ないコーヒー粉ではあまり濃縮度をあげることは困難です。どれだけのコーヒー粉があればどこまでの濃さ倍数で許容濃縮できるのかはまだ十分には分かっていませんが、私が試行錯誤した範囲で述べてみたいと思います。好きなコーヒーの濃さも人によって好みが違うことはよくあることです。許容濃縮の程度は最終的には個人の感覚に左右されることはやむを得ませんので、私の得た結果は一つの目安とご理解ください。

 

普段よく使用していますコーヒー豆と器具は次のものです。

豆:コストコホールセールジャパン社輸入のレギュラーコーヒー(名称)使用

豆種:アラビカ種

生豆原産地名:東ティモール、ペルー、メキシコ他

焙煎:カスタム ロースト(Starbucks Roast)

器具は次のものを使っています。

焙煎豆の粉砕:Kalita ナイスカツトミル 中細挽き(目盛2)

抽出:ツインバード工業 サイフォン式コーヒーメーカー カフェタウン

 

上記のコーヒー粉と器具を使ったとき2を超える濃さ倍数mの濃縮コーヒーが抽出できる最低注湯量は、以下のような探索手順で見つけ出すことができました。これは、コーヒー粉が多いほど濃いコーヒーを抽出しやすいという一般経験則と、濃縮コーヒー最低注湯量の計算式4)を利用した手順になっています。

 

まず、2人前のコーヒー粉で濃さ倍数2の濃縮コーヒーができることはサイクロン式の基本抽出としてわかっていましたので、nとmの組(2,2)は許容濃縮ができるケースの1つになっています。次にnとmをそれぞれ1増やして、(3、3)として注湯量cを計算式4)で算出しました。これに従って3人前のコーヒー粉を使い計算した注湯量cを用いて抽出し、出来たコーヒー抽出液を3倍にうすめてみたところ通常飲むコーヒーより薄いと判定しました。コーヒー粉の量が不足しているのでnを1増やして4とし、再度式4)でcを算出し、改めて4人前のコーヒー粉で抽出を行いました。コーヒー抽出液を3倍にうすめてみたところ、許容できる濃さになっていましたので、この時のnとmの組(4,3)を記録しました。次にnとmをそれぞれ1増やして、許容できる濃さが得られるまでnを1づつ増やしていったところ、次の許容注湯量が得られるnとmの組(6,4)、さらに次の許容注湯量が得られるnとmの組(8,5)を得ました。X軸をn、Y軸をmとして、許容注湯量の組(n,m)をプロットしてみましたところ図4のグラフが得られました。これは何人前のコーヒー粉をつかえば最大何倍の濃さ倍数の濃縮コーヒーを作ることができるか、あるいはある濃さ倍数の濃縮コーヒーを作るのには最低何人前のコーヒー粉が必要かを示すグラフになっています。

  

このグラフから逆にmとnの式を求めますと、

8)    m=n/2+1

が得られますが、この式を用いれば、n=2、4、6、8以外の場合のmおよび許容濃度の注湯量cも計算できて表2が得られます。

表2は私の使用したコーヒー粉のケースであって、豆の種類、焙煎度、粉砕度など条件が変わればまた別の値の表になると考えられますが、上に説明しました方法と同じやり方でそのコーヒー粉に合う許容濃縮の表ができます。許容できる抽出の探索手順を流れ図で描いてみたものが図5です。

 

 


  

この手順を一般化して流れ図にしたものが次図である。

注湯量cと抽出液量dは比例関係にありますのでcが増えればdも増えます。一方、一定量のコーヒー粉に含まれるコーヒー成分の量は限りがありますから、注湯量cを増やせばいずれ抽出液の濃さ倍数mが減少するはずです。このことから、濃縮コーヒー最低注湯量の計算式4)を満たす最大のcが濃さ倍数mに対する「最適注湯量」と考えられます。