第1回 『深夜特急』論――開始にあたって

2000年05月10日
2000年05月20日修正


 書き手と読み手の双方を視野に入れつつ、『深夜特急』という本をかんがえ論じたい、とおもいます。取りあげる方法はかんたんです。書く側の視点・書かれたもの(本)・読む側の視点に切りわけて、書かれていることや話されていることを、できるだけ具体的に丁寧にみていくことです。

 ややくわしく述べてみましょう。

  1.  書く側の視点に自分をおくことは、現実の問題としては、不可能です。私は『深夜特急』を書いていませんし、また、(今後も)おなじ本を書けない(おなじような本であれば書ける可能性はあります)がゆえに。

     しかしながら、沢木氏が書いていることや話していることなどを丁寧に追っていくことで、書き手の立場にかぎりなくちかづくことは可能でしょう。すくなくとも現時点においては、そうかんがえています。

  2.  言うまでもないことですが、書かれたもの(本)をあつかうにあたっては、きちんと読むという作業が不可欠です。
    (そのうえで、2次的な作業として、この本に言及している他の人たちの文章や発言・沢木氏の他の著作などを参考にする必要があります。)
     と書いたものの、ここで取りあげることはすくないかもしれません。以下にあげるような状況や事情があるためです。

  3. 読む側の視点をかんがえるにあたっては、 など、事前に準備をします。

     つまり、このページを見てくれた未知の方たちや友人・知人が知らせてくれるとき、『深夜特急』が話題になった場に偶然いあわせたとき以外は、何らかの資料を発見するか、人にたずねるかというのが、第1段階になります(おそらく書かれたものにたよることが圧倒的に多くなります)。

     ついで、書かれていることや話されていることを、私なりにまとめる作業が第2段階です。

     それぞれの感じ方や考え方を比較するというのが第3段階になります。

     すでに公開している『深夜特急』のリンク集をこの作業の一環をなすものと位置づけたいとおもいます。

 『深夜特急』のばあい、この本を原作にテレビドラマがつくられました(大沢たかおさん主演のこのドラマはおおむね好評だったようです)。沢木氏以外の人の手で派生的な著作も書かれています。「テレビドラマを見て原作をはじめて知った」という声や『僕たちの「深夜特急」』を『深夜特急』とおなじページで取りあげているところもあります。相互におおきな影響をあたえあっているとおもわれます。

 よって、『深夜特急』にかぎっていえば、

  1. 派生的に生まれた映像や画像・著作などと『深夜特急』の関係がどのようなものか、読者の反応なども含めて、注意をはらう必要があるでしょう。

 以上の4点を主たる手がかりとして、かんがえ感じ論じることにします。

このページで言及している資料

2000年05月20日の時点で

『深夜特急』

 『深夜特急』は単行本版で3冊、文庫本版で6冊に分冊されています。

 『深夜特急』の単行本版(ハードカバー版)は、

  1. 沢木耕太郎『深夜特急 第一便 黄金宮殿』新潮社 1986年
  2. 沢木耕太郎『深夜特急 第二便 ペルシャの風』新潮社 1986年
  3. 沢木耕太郎『深夜特急 第三便 飛行よ、飛行よ』新潮社 1992年

 『深夜特急』の文庫本版は、

  1. 沢木耕太郎『深夜特急 1 香港・マカオ』新潮社(新潮文庫) 1994年
  2. 沢木耕太郎『深夜特急 2 マレ−半島・シンガポ−ル』新潮社(新潮文庫) 1994年
  3. 沢木耕太郎『深夜特急 3 インド・ネパ−ル』新潮社(新潮文庫) 1994年
  4. 沢木耕太郎『深夜特急 4 シルクロ−ド』新潮社(新潮文庫) 1994年
  5. 沢木耕太郎『深夜特急 5 トルコ・ギリシャ・地中海』新潮社(新潮文庫) 1994年
  6. 沢木耕太郎『深夜特急 6 南ヨ−ロッパ・ロンドン』新潮社(新潮文庫) 1994年

 単行本と文庫本をくらべて、内容面でもっともおおきくちがうところは、文庫本には巻末に対談がついていることではないでしょうか。これらの対談は『貧乏だけど贅沢』(1999年発行)にも収録されています。

派生的な著作

テレビドラマ

 『深夜特急』を原作にした大沢たかおさん主演のテレビドラマは、つぎの3本です。

  1. 『劇的紀行 深夜特急'96 熱風アジア編』
  2. 『劇的紀行 深夜特急'97 西へ!ユーラシア編』
  3. 『劇的紀行 深夜特急'98 飛光よ!ヨーロッパ編』

テレビドラマでおきたブームに乗じた(?)本

そのほか

  沢木耕太郎『「深夜特急」に乗って』 新潮社(カセット 新潮カセット )  1998年

 ここで挙げている資料リストを作成するにあたっては、goo[グー][目的サーチ[書籍情報]]を利用し参考しました。


弁明と注意

 沢木 耕太郎さんのページ/『深夜特急』を考えるでしている弁明や注意をくりかえします。


 第2回は『深夜特急』はどのように書かれたのか――「記憶と資料」を手がかりにです。


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