ベトナムの本 レビュー/VIET NAM BOOKS REVIEW

 ベトナムに関する本(や雑誌)を批評しつつ紹介するページです。

 作成者の能力上の問題で、ベトナム語でかかれた本はダメです。日本語のものが主です。

1999年09月20日に開設しました。
2001年11月05日に更新しました。


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お知らせ

2000年10月01日

 文藝春秋社さん、プライドはあるの?をつけくわえました。

 「文藝春秋」2000年8月号/「『夢のリゾート』なんて嘘ばかり ベトナム人気で観 光客が味わう恐怖のサバイバル」「CREA」2000年6月号/「ベトナムの誘惑」を合わせて評したものです。

2001年07月16日

 ガイドブックの評を更新しました。

2001年07月22日

 本の紹介・批評文:池野佐知子/イラスト:池田須香子『女ふたりで丸かじり 生ベトナム』扶桑社をくわえました。

2001年08月14日

 本の紹介・批評樋口健夫『ベトナムの微笑み ハノイ暮らしはこんなにおもしろい』平凡社をくわえました。

2001年09月01日

 ガイドブックの評に追記をつけくわえました。

2001年09月02日

ベトナムの本を書いた人たちのWWWの手直しをしました。

2001年11月05日

 文藝春秋社さん、プライドはあるの?に補足を追加しました。これです。


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本の紹介・批評

紹介

2001年05月27日
2001年7月29日改訂

東京農大国際食料情報研究所『ヴェトナム100の素顔 もうひとつのガイドブック』東京農業大学出版会2001年

 見ひらき1項目か2項目で合わせて100コ、ベトナムの農業や食べ物・市場などに関わるさまざまなことがらを、みじかい文章と写真で説明しています。撮った写真を(なかなか)上手につかい、印象にのこったことやエピソードと合わせて記しています。

 農村や農業のようすを知らせてくれる資料として、とても興味ぶかく読みました。農学研究のためにベトナムへ行っていることのつよみなのでしょうか、ふつうに観光していくなかでは目にすることができない事物をいろいろと見せてくれます。この本を読むことで、いくつもあたらしく知りえたことがありました。

 「ベトナムの農村や農業の特徴はどういうところにあるのか」、「日本の農業とベトナムの農業の相違は?(もしくは、「温帯と熱帯の農業の相違は?」)」というようなことについて、解説がほしいと思いました。というのは、農業に関する知識がとぼしい人が読むと、文章をななめ読みして写真を見て「へー」とおもうだけで終わってしまうのではないかと推測するからなのです。また、100コの項目(小見出し)を選ぶにあたってどういう方針をとられたのかが書かれていません。この本の読み方のようなことなども書いてありません。なければないでもいいのかもしれませんが、あった方が良かったのではないでしょうか。

(ほかにもいくつか。英語の副題だけでなくベトナム語のものもあるといいとおもいました。中部の情報がほとんど(ない?)ですね。参考資料も載せてほしい。)

 どちらかというと、本よりもWWW向きな内容なのではないかとかんがえています。編者の方はWebでのフォローをかんがえてみるとのことでした。期待しています。

 この本は編者の方からいただきました。ありがとうございます。

2000年09月24日

講師:加藤 栄『アジア理解講座1995年第2期 「ベトナム文学を味わう」報告書』国際交流基金アジアセンター 1998年

 1996年の1月から3月まで10回おこなわれた「ベトナム文学を味わう」という講義をまとめたものです。『虚構の楽園』等の翻訳で知られる加藤栄さんが講師です。

 文学や文芸の枠におさめず、文学以外の文化や当時の政治・経済の状況をもふくめたなかで、文学作品をみようと努力しているようすがしんしんと感じられました。

 作家や作品をつぎつぎと紹介して、内容を要約・引用し、関係のあるさまざまなことがらについて説明をくわえなければいけない、という事情のなせるワザなのでしょうか。文章そのものは明快でとてもわかりやすいのですが、内容そのものはそれほどわかりやすいと感じられません。

 おしえられることのおおい本(冊子)だとおもいました。

 加藤氏が訳した短編と文学史年表が資料として附されています。  

2000年07月20日

「文藝春秋」2000年8月号/「『夢のリゾート』なんて嘘ばかり ベトナム人気で観光客が味わう恐怖のサバイバル」 文藝春秋社

 「文藝春秋」2000年8月号の302ページから310ページにかけての記事です。

「『夢のリゾート』なんて嘘ばかり ベトナム人気で観光客が味わう恐怖のサバイバル」 という題名がついた座談会風の読み物で、椎名玲・坂本行・テリー鈴木・大関薫という方々が参加されています。

 女性誌のベトナム特集をこよなく愛される方にとっては、一見の価値はあろうかとおもいます。とくに文藝春秋社発行の「CREA」2000年6月号を見て感動してしまった方には、ぜひぜひご一読をおすすめします。

 買うまでもありません。個人的には「買ってはいけない」と言いたい(笑)。立ち読みで十分です(もしくは、図書館で読みましょう)。

 「矜持がないのね(ここに登場してくる女性誌のライターさんも、文藝春秋社さんも)」と私はおもいました。「この記事を『CREA』に載せるだけの勇気がほしいわね」と一友人は言いました。

2000年06月25日

「CREA」2000年6月号/「ベトナムの誘惑」 文藝春秋社

 「CREA」は、A4サイズよりやや幅広の大判のヴィジュアル雑誌で、女性誌といわれています。2000年6月号では、80ページちかい枚数をさいたベトナム大特集が組まれました。雑貨や高級ホテル・レストラン・カフェを取りあげたグラビアページが中心になっています。

 「よくおもいきって取りあげたなあ、これだけのページ数を使うとは……」というのが第一印象でした。なんにせよ、おおきく特集をくんだことは(個人的に)評価したいとおもいます。

 私自身はさほどありがたみを感じないのですけれど、ベトナム雑貨の愛好し高級ホテルに泊まりたいとおもっている人たちには、うってつけのガイドになることでしょう。興味のある方は、書店か文藝春秋社にといあわせるか、図書館でバックナンバーをさがしましょう!

 一方、グラビア誌ならではの欠点もあります。

 ベトナムの風景がきれいに見えすぎてしまうのですね。多数の読者が好んでいる(正確を期すと、好んでいるということになっている)写真写りと構図にしたがいすぎているのではないかとおもいます。「こういう写真を撮る」ということがあらかじめ決められていて、写真家のお仕事は要望されているとおりに風景を切り取っているにすぎないと感じてしまいます(写真をあつかう技術がたかいおかげで、きれいだが、おもしろみはない)。じっさいにベトナムに行きますと、ごちゃごちゃとしたところがいっぱい目につくはずです。

 また、ベトナム人がほとんど現れないカラー写真がたくさんならんでいるというのは、とてもフシギな感じがしました。いかにも演出された写真という雰囲気をにおわせます。1回でもベトナムへ行ったことがありますと、ベトナム人がいない風景はとても不自然なことが実感されて、変だなあと感じてしまうのです。

 読者層をかんがえると、モデル(モデルでなくてもいいですが)にアオザイ(アオヤイ)を着てもらった写真が何枚かあってもいいのになあ、という感想ももちました。

 以前に「グラビア誌では文章は写真のツマではないのか」と書いたことがあります。数ページのモノクロ文章ページ(8ページあり、わりとよく書けている)をべつにしますと、この傾向はこの特集においても例外ではありません。

 フランス語のサブタイトルはまだしも、表紙で「コロニアルな避暑地で、優雅な午後を」と、「コロニアルなホテルで贅沢な時間を」(p47)と、目次で「メコンデルタに誕生したヨーロピアン・リゾート」(p19:目次)と表題をつけてしまう編集・取材の人たちが何をかんがえているのか(ほとんど何も考えていないのか?!)、私にはとうてい理解ができません。恥ずかしくおもわないのでしょうか。

 編集・取材の人たちほどではないにしろ、これらのお題を見て何にもおもわない読者の人たち(←少なからずいるとおもわれる)は、恥ずかしい存在です。もう一度もうしあげましょう、恥ずかしい存在です。

( これでもまだわからない人は、まずは辞書で「コロニアル」(colonial)か「コロニー」(colony)という単語を引いて意味を理解し、ついで19世紀から20世紀にかけてのことを書いた歴史の本(わかりやすい本をえらびましょう!でも、まともな本でなければダメです。植民地史の本は適切なのですが、やや専門的すぎることがあります。)をしらべましょう。)

「CREA」2000年6月号/「ベトナムの誘惑」補足

2001年11月05日

 すぐ上に書いた「コロニアル」ということばに関して、ご意見をいただきました。ここで補足も兼ねて説明しています。

2000年04月10日

西村 満『大使閣下の料理人』近代文芸社 1996年

原作:西村 ミツル/画:かわすみ ひろし『大使閣下の料理人』(第1巻〜第5巻)講談社 1998〜2000年  

 「モーニング」に連載されている『大使閣下の料理人』の評判は、かなりいいようです。残念なことに、私は楽しめませんでした。おもしろいとおもいません。つまらないと断言したいのはやまやまなのですが、おもしろく読めぬマンガをすみずみまできちんと読むというつかれる地道な作業を経たうえでの感想ではないので、詳細を述べること、および、断言的な感想は、手控えさせていただきます(ちょっとだけコメント。ここ1ヶ月ほど(2000年3月〜4月初旬にかけて)雑誌で展開されているストーリーに典型的に見られるように、そうとう無理をしているのではないでしょうか。ありえないような設定までして、平坦な日常を盛り上げようとしているのを見るのは、つらいものがあります)。

 とはいうものの、「モーニング」のようなメジャーな雑誌に掲載されつづけていることは、意義あることでして、おおいに評価したいとおもいます。絵柄もわかりやすく親しみやすいと感じます(そのぶん、現実感に欠けるのだけれど)。

 ところで、西村氏は、1996年に近代文芸社から同名の本を出しています。マンガからはとうてい想像できないざっくばらんな語り口の本です。ご興味のある方は、どうぞ。

2000年02月20日

近藤 ナウ『アオザイ女房――ベトナム式女の生き方』 文化出版局  1978

 かつて産經新聞社に近藤紘一という新聞記者がいました。彼がベトナムから連れてきたナウ夫人、彼女が書いた本です。妻から見た近藤氏やベトナムのあれこれ、日本の社会への印象などが書かれています。

 日本人の男たちは妻をないがしろにしている、彼らの妻たちもそれでいっこうにかまわないと感じているようだと喝破します。そして、会社の都合を優先し、妻との時間を大切に思わないのは、じつに良くないことだ述べます。じっさい、会社が終わったら早く帰ってくることと、細やかな気づかいを忘れないことを、しっかりと近藤氏に求め続けていたようです。

 戸籍を買った話・お化けや幽霊の話・買い物や料理の話など。興味深い話が他にもいろいろと述べられています。

 近藤紘一を知らない人がたまたま手にとっても楽しめる本だとは思いますが、彼の本を読んでいる人にはいっそうおもしろく読めることでしょう。

 (絶版です。もしかしたらお近くの図書館の書庫などにねむっているかもしれません。)


1999年11月07日

石井 米雄監修/桜井由躬雄・桃木至朗編『ベトナムの事典』同朋舎 1999
は、事典というよりは本、「引くもの」というより「読むもの」という感じがします。気になったことがらについてしらべてみる、ひろい読みする、事項別にみていく、はじめから通して読む、……さまざまな読み方・見方がたのしめるとおもいます。
 ただし、値段が高いことはおおきな欠点ですが。
 同朋舎の書籍案内には、

ベトナム語の知識と現地体験を加えた執筆者による初めての事典。レベルの高い情報を平易に記述しました。項目数700項目、写真130点を掲載。
と紹介されています。

批評

樋口健夫『ベトナムの微笑み ハノイ暮らしはこんなにおもしろい』平凡社1999年

文:池野佐知子/イラスト:池田須香子『女ふたりで丸かじり 生ベトナム』扶桑社2000年

大橋 久利・トロン=メアリー『ヴェトナムの中のカンボジア民族 ―メコンデルタに生きるクメール・クロム―』古今書院1999年
 メコンデルタに在住するカンボジア民族の文化・政治・経済を、カンボジアに住むカンボジア人、ベトナム人(キン族)と比較します。とともに、トロン=メアリーさんの自分史や大橋氏によるカンボジア人家庭住み込みの記録、カンボジアやベトナムの歴史がかたられています。
 対談というカタチをとっていて、文章は読みやすい。写真・図・表が多数はいっています。構成はややわかりにくい。
 この本の出版を決意した古今書院の編集長や社長の方が著者の大橋氏より(はるかに?)えらいのではないか、とおもってしまいます。トロン=メアリーさんと大橋氏の心意気にこたえたのでしょうか。

玉木 明『「将軍」と呼ばれた男 戦争報道写真家・岡村昭彦の生涯』洋泉社1999年
 年譜と著作・報道写真を読み込み、岡村昭彦という報道写真家の人生の軌跡をたどったものです。書かれた資料に忠実な態度がうかがえ、好感をもちました。その一方で、写真への言及と他の写真家との比較がほとんどありません。岡村昭彦を知らない読者に対していくぶんか不親切なところがあります。

金 忠男・吉原 忍・野田 孝人『メコンデルタ単身赴任記』鳥影社1999年
 メコンデルタの農業とカントー市に滞在して気づいたことがいろいろと書かれています。

チャン=キィ=フォン/重枝 豊著『チャンパ遺跡』連合出版1997年
 チャンパ遺跡をまるまる1冊とりあつかった本。遺跡を見にいったあとでよんでみると、理解がふかまるのではないかとおもう。

クレア=エリス著/増永 豪男訳『カルチャーショック07 ヴェトナム』河出書房新社1998年
 ビジネスマンむけの、デキがいいとはとうていおもえない原書を翻訳したもの。日本語訳したときに協力者の尽力で何とかそこそこよめるものにしたてあげたという感じ。残念ながら、「木に竹をついだよう」になってしまっています。この本を翻訳しようと考えた時点で、企画の失敗だとおもう。


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旅行にもっていきたい本(おすすめ!)

1999年09月20日

 おすすめしたい本をあげてみたいとおもいます。

を考慮した選定です。


ベトナムを主題にしたもの

 うすいながらも、ひじょうにてぎわよくまとまっている本が
坪井 善明『ヴェトナム「豊かさ」への夜明け』岩波新書1994
です。

 坪井氏は編者・監修者として、
坪井 善明編『暮らしのわかるアジア読本ヴェトナム』河出書房新社1995
にかかわっています。すぐれた概説書です。すべてよみきれなくても、コラムをひろいよみするだけでもたのしい。

 
岡林 ゆかり『ベトナムで赤ちゃん産んで愉快に暮らす』筑摩書房1996
 じつはタイトルをちらっとながめていただけで、ながいあいだ敬遠していたのです。市場や売られている食材・子供の学校のことなど、他書に書いていないことが数多くとりあげられています。『毎日市場で目新しい食材を買い込んできては実験するように料理を楽しんでいる』なんていいではないですか。

 いまさら紹介するのは気がひけますが、
本多 勝一『本多勝一集 第10巻 戦場の村』朝日新聞社1994
は、ヴェトナム戦争の臨場感あふれるルポ・ルタージュです。朝日文庫にも入っています。


テーマをもったよみもの

 バンコクを経由したせいもあり、
前川 健一『タイ・ベトナム枝葉末節旅行』めこん1996
に何度も感心させられました。ヴェトナム人カップルのじゃれあうようすや出される食べ物の温度からタイ料理との相違を指摘しているのが、するどい。『白いアオザイで、パンツが透けて見えないものはニセ物である』と言いきっています。

 メコン河に興味をもっている方には、
石井 米雄(文章)・横山 良一(写真)『メコン』めこん1995
がいいでしょう。ヴェトナムに関係する記述がすくないのは、著者の専門外だからなのでしょうか。ひょっとしたら、『いやがる私に「無理やりに」この本を書かせた……』という成立事情のせいかもしれません。

 カラオケをテーマにアジアの国々をまわった
大竹 昭子『カラオケ、海を渡る』筑摩書房1997
は、目のつけどころがとてもいい。日本で発明されたにもかかわらず、カラオケの伝播について書かれた本は意外とすくないそうです。『愛すべきローテクカラオケ』と『歌における北と南』という章にヴェトナムのことがあります。

村井 吉敬『エビと日本人』岩波新書 1988
 現在、ヴェトナムは日本の主要なエビ輸入先の一つです。この本にはヴェトナムはほとんど登場しません(が、今のところ、適当な類書がないので紹介しています)。もっぱらインドネシアや台湾などと日本での調査が主です。エビをとおして日本と東南(東)アジアの関係に思いをはせていただければなあ、と。ちょっとふるい本です。


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ガイドブック レビュー

2001年07月16日

 (注意)ガイドブックを批評するもご覧になってください。

 『個人旅行』は2001年05月01日付けで改訂版が出ました。

 改訂版になっておおきく変わったことは、掲載されている各都市がそれぞれ南部と北部・中部にはっきりと分けられたことです。前の版までは都市を掲載する順番に規則性(や規範)があるとはおもえない状態で、わかりやすくありませんでした。明瞭に区分けされたことで、すっきりしてとても良くなったとおもいます。
 他にはホテルの値段が変っているといった類の小さな変更しかありません(私が見たかぎりでは)。

 こまかいことだとおもわれるかもしれませんが、『個人旅行』の最新版についてあと1つだけ書いておきたいことがあります。
 17ページにあるビザ情報がまちがえた(おだやかな言い方をするなら「現状と異なった」)ままであるのは問題です。2ヶ所まちがえている(現状と異なっている)ところがあります(しかも、その2ヶ所のうち1ヶ所は前の版で情報をあらためるべき事項でした)。改訂ごとにすべき(情報の)確認をなまけているせいでしょう。
 まず1ヶ所は、欄外の「ビザ取得の注意」で『ビザには必ず出入国ポイントの記載が必要。……』というところ、もう1ヶ所は「ビザの延長」で『1995年8月から、基本的にツーリスト・ビザの延長はできなくなった。』というところです。2001年春の時点でそれぞれ「(現在は)出入国ポイントは限定されなくなった」、「(状況は流動的だが、)イミグレーションオフィスや旅行会社でツーリスト・ビザの延長の手続きができる」ようです。

 (都市を掲載する順番がおおきく改善されたこと以外は、今回の改訂はマイナーチェンジにとどまっています。去年の版を持っている方は、あらたに購入する必要はないとおもいます。)

 『地球の歩き方 ガイドブック・シリーズ(93)ベトナム』は2001年06月29日付けで改訂版が出ました。

 おもいきってレイアウトをかなりおおきく変えたことが、今回の改訂版で一番おおきな変更点だったのではないでしょうか。巻頭の特集ページや巻末の読み物ページはあまり変わり映えしなかったものの、都市情報のページは(今までの版とくらべて)色彩を効果的に使ってメリハリをきかせ(例えば、都市情報の「ホテル」や「レストラン」のところ、など)、また、罫線をうまく使っています。以前より見やすくなったと感じます。また、ホテルやレストランの写真が増えました。

 今回、フーコック島やハーティエンのホテル情報が追加および更新され、ハノイ近郊へのツアーが取材をもとに書かれ、巻末ちかくにある「政治経済」と「ベトナムポップス」が書きかえられました。(注目している人はけっしておおくないとおもいますが、)前回も今回も、改訂されるたびに解説ページにすこしずつ変化が見られました。好感がもてます。

 残念ながら、わるい意味での現状維持もめだちます。
 あるところに書いてあることとべつのところに書いてあることがくいちがっている(ところが散見される)こと、情報がしばしば錯綜していてわかりにくいこと、都市の掲載順が不統一であること、などについてはほとんど変化が見られません。また、掲載されているホテルの値段が相場より高いことが多いのも、前々からの版の悪しき状態をひきずっているのではないでしょうか。今回の改訂版でだいたい相場の値段にあらためられたところはありましたが(サイゴン(ホーチミン市)のボンセン2など)、掲載されている値段はおおむね高過ぎる感じです。これもくりかえしになりますが、本の紹介のところでの坪井義明と本田勝一という誤植はそのままです(それぞれ「坪井善明」と「本多勝一」がただしい)。なおすつもりはないのでしょうね。
 いろいろと欠点をあげたものの、巻末の読み物ページの充実ぶりと掲載されている都市についての情報量の多さ(質については疑問のところもあります)は、他のガイドブックを寄せつけないつよみだ、とおもいます。

 結論を述べます。ベトナムのガイドブックは、(依然として)『地球の歩き方』と『個人旅行』の2冊をおすすめいたします。
 改訂版においても古びてしまった情報やマチガイがすくなくありませんが、旅行する人がマチガイ情報を訂正・修正しつつ利用することができるなら、十分参考になるでしょう。情報量をとるなら『地球の歩き方』、見やすさをとるなら『個人旅行』になるとおもいます。

 以下に、かんたんにですが、その他のガイドブックへの評を述べておきます(くわしい情報が必要な方はこちらをご覧になってください。たぶん参考になります)。

 『地球の歩き方』は2種類ありますが、私がすすめるのは『地球の歩き方 ガイドブック・シリーズ(93)ベトナム』の方です。ダイヤモンド社からは『地球の歩き方 旅マニュアル・シリーズ(271)ベトナム個人旅行マニュアル』というガイドブックも出ていますが、これは「買うまでもないガイドブック」といったところでしょう。

 『旅行人ノート3 メコンの国』の改訂版は、ベトナムのところに関していうなら、そこそこのできです。カンボジアやラオスも行く人には比較的有用でしょう。ですが、ベトナムだけということなら選択肢から外してもいいのでは?
 ベトナムのガイドブックをつくっている日本の会社のなかではおそらく唯一でしょう、つくったガイドブックのフォローをWWWでやっています。そういうところは評価したいです。

 福井隆也・小林紀晴・関口左千夫『新版 ベトナム・センチメンタル+ラオス、カンボジア』情報センター出版局 1997年第2版(第1版は1995)
はおすすめしません。とくにわるいというわけではないのですが、はっきり言うと『地球の歩き方』や『個人旅行』にかなわないガイドブックだとおもいます。特徴に欠けるのです。いろいろなことは書いてあるけれども、どれもこれもで中途半端、散漫な印象をうけました。カタログに徹しきれていない。旅行情報誌にも、読みものにも、写真集にも、徹しきれていない。文章そのものも『地球の歩き方』のスタイルとあまり変わらないではないかと感じました。もっと筆者たちの主観を前面に押しだして書けばいいのに!ただ、名のあるカメラマンたちの手によるだけあって、写真はすばらしい。

 文春ビジュアル文庫の
勝谷誠彦編『ベトナムに行こう』文春文庫ビジュアル版 1997
は、帯で『2冊目のガイドブック』をうたっています(いました?)が、中身は紀行文集です。ヴェトナム近現代建築について10ページ強の記述があり、この文集のなかでは一押しです。

 JTB出版事業局『るるぶ 情報版 海外25 ベトナム・アンコールワット』JTB 2000(2001?)
『るるぶ……』は、書店かなにかで見るだけにしておきましょう。よほど気に入った写真でもないかぎり、買うのはさけたいものです。おカネがもったいない。

 おなじくJTB出版からの
JTB出版事業局第六部編『ワールドガイド ベトナム・アンコールワット '00〜'01』JTB出版局 2000年
 サイゴン(ホーチミン市)・ハノイ・フエの3都市のうちどれか+αくらいのご予定を組まれている方にとっては、わるくない選択だとおもいます。
 旅慣れてくると、このガイドブックでは不満でしょう。しかし、ベトナムのことをほとんど知らない人、時間の余裕のない方、旅慣れていない方にとってみれば、余分な情報が書いていないことで混乱しないで済み、かえっていいかもしれません。

 英語ガイドブックでもっとも有名(「もっともいい」とはかぎらない!)なのは、Lonely Planet Guides(http://www.lonelyplanet.com/)シリーズでしょう。Vietnam - a travel survival kit(6th edition)のほかに、都市ガイドとしてHo Chi Minh city guideHanoi city guideも発行しています。
 ちょっと立ち読みした程度の印象ですが、Vietnam - a travel survival kitの第6版は、すくなくとも、第5版よりはマシなできだと感じました(第5版のできは、おせじにも良いとはおもえませんでした)。

 英語で書かれたガイドブックについては、Guide to Guidebooks(http://www.vietnamadventures.com/getting_there/guidebooks.html)が参考になるでしょう。個々の批評が妥当かどうかは、判断を保留します。おおもとのガイドブックをきちんと読んでいないもので。

ガイドブック レビュー 追記

2001年09月01日

 JTB出版から出ている
JTB出版事業局第六部編『ワールドガイド ベトナム・アンコールワット '01〜'02』JTB出版局 2001年
の改訂版が出ました。改訂版と記さず、新版のように「2001年8月1日発行」としか書かれていません。

 (くりかえしになりますが、)ベトナム旅行になれてしまった人には、ややものたりないのですけれど、サイゴン(ホーチミン市)・ハノイ・フエの3都市のうちどれか+αくらいのご予定を組まれているベトナム旅行はじめての方にとっては、わるくない選択かもしれません。

 改訂版はビザ情報などにわずかな変更がある以外は、ほとんど変わっていません。去年のガイドブックを持っている方は、買う必要はほとんどないとおもいます。

 「本とCD」(p262-263)という項目があらたにつけくわわりました。JTBのガイドブックにしてはめずらしい試みで、とてもいいとおもいました。ただ、紹介されている本は、かなりばらつきがあります。1冊めは皆川さんの本でいいとおもうものの、2冊めは『カルチャーショック ヴェトナム』だったりしますから……。こまかいことですが、(『地球の歩き方』と同じく)坪井善明さんのなまえが「坪井義明」になっています(ひまな人は、つぎの版でなおっているかどうか、チェックしてみましょう)。


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ベトナムの本を書いた人たちのWWW

2001年09月02日更新

『ベトナム人と日本人』を書いた
穴吹 允さん
(http://www2.starcat.ne.jp/~v-v-nhat/)
のページは、もりだくさんです。コラムもよめます。しかし、ご自分でニャット先生を自称しているのを見るのは気色わるいなあ。

 『旅の指さし会話帳11 ベトナム』著者の
池田 浩明さん
(http://homepage2.nifty.com/seven_stars/index.htm)
 まだ「ページがそこにあるだけ」という感じです。

 『ハノイの路地のエスノグラフィー −関わりながら識る異文化の生活 世界−』を書いた
伊藤 哲司さん
(http://www4.justnet.ne.jp/~tetsujiyuko/)
のページです。

 
西原 理恵子さん
(http://www.jah.ne.jp/~aiai/riezo/)
がベトナム旅行のことを書いていたのは、たしか『鳥頭紀行 ジャングル編』でした。ちなみに、メニューのページはここです。

 『忘れないよ、ヴェトナム』(2001年5月に幻冬舎から文庫版が出た)を書いた田口 ランディさんは以前はホームページを持っていたのですが、たたんでしまったようで再開していません(ファンのページはあります)。「MYCOM PC WEB - Column Square」などで連載をもっています(ここです)。当分のあいだは、暫定処置として(筑摩書房の軒先を借りた)日記をリンクしておきます。
日記
(http://www.chikumashobo.co.jp/web/taguchi/)
 以前のページはここ(←リンク切れ)にありました。プロフィールを記したページ(http://pcweb.mycom.co.jp/column/randy/profile.html)(←これもリンク切れ)には、

 3年前にネット上に自分の会議室を持ち、そこに猛烈にエッセイを書き込んでいたところ、ダイヤモンド社のT編集長に拾われて「ヴェトナムに行きませんか?」と誘われる。まるで電波少年のようなノリで右も左もわからぬヴェトナムに飛び、放浪記を書くことに。メコンデルタを手こぎボートで放浪した後、初の著書「忘れないよ、ヴェトナム」を出版。翌年には、屋久島でのフィールドワークの集大成「癒しの森 ひかりのあめふるしま屋久島」を出版。しかし、あまりにも売れないので編集者から見放されたところを、……(以下略)……
とありました(が、消えてしまったようで残念です)。うれなかったのですね。

 『ヴェトナム ディープウオッチ』と『ヴェトナム ドリーム』の
外山 ひとみさん
(http://web.parknet.co.jp/hitomi)
のページには旅行のページというのがあって、こぼれ話・ヴェトナム編 が読めます。それぞれの話は短いのですけれども、おもしろい。

 『旅行人ノート3 メコンの国』改訂版の執筆者である
中村真紀さん
(http://www.linkclub.or.jp/~maki-n/)
のページは、まだまだ工事中のところがたくさんあります。

 『ベトナム縦断途中下車の旅』の北半分を担当した
西牟田 靖さん
(http://www.koide.net/~nishimuta/tm/)
は、ベトナムで襲われたバイクタクシーのトラブルというコラムをのせています。

 『新版 ベトナム・センチメンタル+ラオス、カンボジア』の著者のひとり
福井隆也さん
(http://www.kt.rim.or.jp/~fukui/)
のページがあります。

古田 元夫さん
(http://ask.c.u-tokyo.ac.jp/furuta.html)
のページです。手をつないでというエッセイや地域写真館という画像集があります。

 『ベトナムぐるぐる』を書いた
ムラマツ エリコさん・なかがわ みどりさん
(http://rose.ruru.ne.jp/kmp/)

『サイゴンの昼下がり』
横木 安良夫さん
(http://www.alao.co.jp/home.html)
のページです。ベトナム関連映画評では、神田憲行さんの対照的な見解も合わせてのせられています。 


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ベトナムの本の感想・紹介・批評がのっているページたち

2001年05月27日ここへ移動
2001年09月02日更新

 

個人のページ

 しおたさんの
本の紹介
(http://village.infoweb.ne.jp/~tshiota/bookJ.htm)
 日本語教師のベトナム滞在記やベトナム戦争・政治批判・小説など、さまざまな本を簡潔に紹介しています。

ベトナムに関する書籍
(http://www2u.biglobe.ne.jp/~k-tokuda/vietnam/books.html)
 本の紹介と感想。短めです。

 うなずけないところはたくさんありますが、
旅本ナデ斬り閻魔帳
(http://www02.u-page.so-net.ne.jp/rb3/kamakura/enma.htm)
は、いきがいい。
 たとえば、小倉貞男著『物語 ヴェトナムの歴史』(中公新書)に対しての

 読みにくい文章を書く人の、東の横綱が大学教授なら、西の横綱は新聞記者だろう。この本の著者は、新聞記者出身の大学教授だから、終わっている。読者に対して、親切な文章とはとてもいえない。ぶつぶつ切りの文章で、乗りは悪いし、一度出てきた人物名を、二度紹介しないし。ヴェトナムの人物名なんて覚えにくいのだから、何度も説明してくれないと、わかんないだろ! 「物語」のかたちを為しているのは、最初だけで、もうあとは、出来損ないのヴェトナム通史概説書である。読みにくいけど、ヴェトナム通史を手軽に読める本も他にない。うーん、なんとかならんのか。
という批判に、おもわずわらってしまいました(私はこの本をまだよんでいませんが)。この本をよんだ方、上に引用した文章は一面の真理を言い当てているのでしょうか?

ベトナム関係書籍リスト←行方不明
(http://netpassport-wc.netpassport.or.jp/~wedaatsu/vietbook.html)
 神田憲行『サイゴン日本語学校始末記』について、『正義感溢れた熱血青年の青春の記録という感じでおもしろかったです。この本を越えられるものを書けるかというのが神田さんの課題かと思ってます』というコメントがありました。『この本を越えられるものを書けるかというのが神田さんの課題』というのは、手きびしい(感じがする)なあとおもって、このコメントをしている方をみたら……。

 ゴーアジ
本フォーラム
(http://www.go-asia.net/bbs/book/)
には、ベトナムの本が何冊か紹介されています。アジア各国会議室にくらべて低調です。 

  PEACE BOAT 地球一周クルーズ航海日誌のなかにある
BOOK LIST ベトナム
(http://viva.cplaza.ne.jp/cruise/booklist/vietnam.html )
は、ベトナムの本が短い文章で紹介されています。

ベトナムを知るための本のページ
(http://www.tama.or.jp/%7Eakihiyo/note_to_tone/review_top.html)

 更新してほしい。

 近藤紘一さんの本を6冊も挙げている方もいます。
愛読書
(http://www.fsinet.or.jp/%7Eabracada/td_profile_book.html)
です。

ページをめくって
(http://www.biwa.ne.jp/~nanaxxx/nana/book/book.htm)
から3冊。忘れないよ!ヴェトナムベトナム ぐるぐるベトナムで見つけた かわいい★おいしい★安い!

産經新聞

 産經新聞社読書ページの検索でしらべてみると、20件以上ひっかかってきました。書評と銘うっているものの、かるい紹介程度のものがおおいです。唯一、まとまった分量があったものは、
◆森岡恭彦が読む/ 矢田部厚彦著『ヴェトナムの時』スリエーネットワーク
くらいでした。私が批評した『カルチャーショック07 ヴェトナム』『ベトナム夜の歩き方』というものまで、硬軟とりまぜた本の紹介をしています。

朝日新聞

 検索システムが改悪されたため、最近の書評をチェックしにくくてこまっています。

書評

記事

研究系

東京外国語大学今井研究室の学生さん
 
ベトナム関連文献の短評←行方不明?
(http://202.13.5.79/documentation/ICS/imai2/bunkensyoukai/gakuseibunken.html)
 だいぶまえにつくられたもののようで、最近の本はとりあげられていません。


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